【インタビュー】新妻敦子さん

公開日 2023年09月25日

更新日 2023年10月10日

三鷹市男女平等参画啓発誌「Shall we?」第77号(2023年9月発行)で特集した「三鷹の防災をリードする女性たち」のインタビューをまとめた記事です。

三鷹市男女平等参画啓発誌「Shall we?」とは

男女平等参画について、今注目したいテーマについて、市民の実感に基づいて編集し、読者に分かりやすく問いかけ、共に考えることをコンセプトに発行している啓発誌で、1993年の創刊以来、市民編集委員と市の協働により作成しています。

詳細は三鷹市ホームページからご確認ください。

新妻敦子さんプロフィール

プロフィール写真
  • 防災トイレアドバイザー
  • 女性のための防災・防犯勉強会in三鷹 講師
  • 社会保険労務士

(2023年7月現在)

『防災トイレアドバイザー』の資格を活かしながら女性の安全安心をテーマとした防災講座を開催。
周りの人からは『トイレ先生』と呼ばれている。

防災活動を始めたきっかけ

東日本大震災のとき、避難所のトイレの問題が非常に深刻だと知って問題意識を持ちました。
同時に『日本トイレ研究所』というNPOの存在を知って個人会員として入会したんです。
そこで『防災トイレアドバイザー』の資格を取得し、地域で防災やトイレ問題をお話しする機会をいただくようになりました。

『防災トイレアドバイザー』の講習会では、いろいろな施設(実在・架空ともに)を想定して防災トイレ計画をつくるという実践的な課題があるのですが、災害発生時には施設が設置する箱もののトイレや備蓄の携帯トイレだけではとても足りません。
利用者一人ひとりが携帯トイレを家や車、バッグに備えておくことが大切です。お出かけの際にも2、3回分バッグに入れておくことが習慣化するといいなと思います。

携帯トイレもさまざまな種類があって、持ち歩きに便利なコンパクトなものや凝固剤が最初から袋に設置してあるものなどがありますので、試してみて使いやすいものを選んでいただければと思います。

女性にとっての防災と防犯

2019年からは、トイレ問題も含めて女性の安全安心をテーマとした『防災・防犯のための女子トーク会』と題するイベントを8回にわたって開催しています。
女性にとって、防災と防犯はとても近しい課題なんです。

『女子トーク会』では、女性の身体をしているが故に、あるいは、女性というジェンダーだからこそ背負いがちな困難についてお話をしています。
例えば、入浴中に地震が起きて閉じ込められてしまったら…。
「恥ずかしがっている場合じゃないんだから裸でも避難しろ。助けを呼べ。」と言われるかもしれませんが、現実的にそれは難しいんです。
避難所では、まゆ墨がなくて、まゆの無い顔を見られるのが嫌でずっとフードを被って下を向いていた、という方もいます。
こうした事例は、尊厳というと少し大げさかもしれませんが、その人にとっては深刻な問題です。
日常を維持するという意味でも、平静心を保つためにも大事なことです。

犯罪が起きない場所づくり

燃焼の三要素と防犯の三要素

小宮信夫さんという犯罪学の専門家が『犯罪機会論』という考えを日本で広めていらっしゃいます。
これまで日本では、「犯罪をするのはどういう人か」に注目する『犯罪原因論』が一般的でした。これに対し、『犯罪機会論』では「犯罪はどこで起きるか」に注目します。 
小学校の理科で『燃焼の三要素(可燃物・点火源・酸素)』を習いますが、これを防犯に置き換えると『防犯の三要素(被害者になりやすい属性の者・加害者予備軍・犯罪の起きやすい場所)』となると思います。この「犯罪の起きやすい場所」に近づかない、作らない、無くしていくことが重要だと小宮先生は指摘されています。

日本の公衆トイレは、まさにこの「犯罪の起きやすい場所」になってしまっています。
男女の入口が隣接しているようなトイレでは待ち伏せして簡単に入り込めますし、細い通路の奥にやっとトイレがあるような場所ですと逃げ場もありません。
最近では、女性用トイレを無くして共用トイレにした事例が話題になりましたが、防犯対策についても考えていくことが大切です。
有名なデザイナーがデザインしたトイレもニュースになっていますが、斬新さやオシャレさよりも防犯・衛生の面で安心できるトイレが必要ではないでしょうか。

イギリスでは1998年に『犯罪及び秩序違反法』という法律が制定されました。
これは、あらゆる都市計画に犯罪が起きないような配慮を盛り込むことを義務付けたもので、もし犯罪が起きたらその場所を管理する地方自治体は被害者に損害賠償をしなければならない、ということまで決まっています。

個人の自衛には限界があります。
自衛を強いるばかりではなく、犯罪が起きない設計を考えていく必要があると思います。
それは、災害発生時にも同じことです。
残念なことに、災害時には犯罪が起きやすくなります。
そして、さまざまな混乱が起こっていますので監視の目も届きにくくなります。
女性も男性も、日常から防犯の意識を持つとともに、それが災害時にも生かせるようにならなければいけませんね。